診療内容の紹介

 腎臓内科では、腎臓病(腎不全、腎炎など)、高血圧(本態性・二次性)、血液透析、腹膜透析、急性血液浄化を中心に診療を行っております。
 専門外来受診希望のある方は、HP外来表をご参照頂き、来院ください。

疾患について:腎疾患

 慢性腎臓病とは、腎障害を示す所見や腎機能低下が一定期間以上続く状態のことをいいます。慢性腎臓病が進行しますと、末期腎不全となり腎代替療法として血液透析、腹膜透析そして腎移植を選択する必要があります。また、慢性腎臓病は同時に脳卒中、虚血性心疾患といった心血管系疾患発症の危険因子であることもわかってきています。

慢性腎臓病の原因疾患は様々でそれぞれ診断と個々の対応が必要となります。

  1. 糖尿病性腎症
     糖尿病を発症した後、ある程度の歳月をかけて糖尿病性腎症は発症します。初めは、通常の尿検査では異常とはわかりませんが(微量アルブミン尿期)、その後、尿検査で尿タンパク陽性として見つかる状態(顕性腎症期)になります。そして、血液検査で腎機能が低下していることがわかるようになります(腎不全期)。ついには、腎不全の症状が出現し、腎臓の代わりとなる治療が必要な状態となります。
  2. 腎硬化症
     高血圧や加齢などにより動脈硬化が進行し腎臓が硬く萎縮してくる病気です。 従来、腎予後は良好と考えられてきましたが、末期腎不全に移行することも多いことがわかってきました。実際、ここ5年間で透析導入患者さんにおける原疾患としての割合は増えてきています。
  3. 慢性糸球体腎炎
    IgA腎症
     我が国で、慢性糸球体腎炎の中で最も多い腎炎です。IgA腎症は緩やかな経過をたどり、比較的予後のよい腎炎とされてきました。しかし、長期観察すると腎機能低下例が一定の割合で見られ、早期の診断と治療介入が重要であります。病因はIgAという免疫グロブリンが何らかの抗原と免疫複合体をつくってこれが腎臓(糸球体)に沈着し、炎症を惹起し、腎障害を引き起こします。 罹患しやすい年齢は中学生から30代前半ですが、必ずしもそうとは限りません。風邪、腸炎などの感染症に罹患した際に、コーラ色の肉眼的血尿を認めることがあるのが特徴です。治療は必要性含め様々なため腎生検による診断と治療方針の決定が重要です。
  4. ネフローゼ症候群
     ネフローゼの定義は
    ①尿蛋白3.5g/日以上が持続する
    ②血清蛋白6.0g/dl以下(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン3.0g/dl以下)
    ③高脂血症、血清コレステロール250mg/dl以上
    ④浮腫
     尿中に大量の蛋白が排泄されることにより、血液中のアルブミンという蛋白が減少します。その結果、血漿膠質浸透圧が低下し、全身性の浮腫(特に眼瞼や下腿浮腫が著明)をきたします。低下したアルブミンを補うため、肝臓ではアルブミン合成がさかんになりますが、同時にLDLコレステロールや凝固因子を合成するために、高脂血症や血栓を形成しやすいなどの症状も認める疾患の総称になります。
    様々な腎疾患でネフローゼ症候群をきたすため多くは腎生検による診断が重要となります。

    • 膜性腎症
       原発性ネフローゼ症候群の原因疾患の中で、もっとも頻度が多い疾患です。好発、発症年齢は中高年です。特発性と二次性にわけることができます。特発性は近年、M型ホスホリパーゼA2受容体抗体がその原因となることが報告されています。 二次性として特に重要なのは悪性腫瘍によるものです。このため全身精査による悪性腫瘍の検索が必要です。約30%の患者さんは自然に治癒しますが、残りの患者さんはタンパク尿が残り、ステロイド治療が必要となります。治療の反応を見ながら必要に応じて、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用します。
    • 微小変化型ネフローゼ症候群
       発症様式が急(ある日突然浮腫をきたすということ)であることが特徴的な疾患です。発症年齢は、小児から、高齢者まで多岐にわたっていますが、若年に多いのが特徴です。また、排泄される尿蛋白は低分子量の蛋白が主体であることもこの疾患の特徴です。原因ははっきりとわかっていませんが、何らかの免疫反応に関係していると言われています。病理組織を見ても光学顕微鏡上はほとんど変化を認めないため「微小変化型」と呼ばれています。初期治療としては副腎皮質ステロイドホルモンを用い、著効するため診断的治療を先行することもあります。この病気は、治療することは比較的容易なのですが、よく再発することもまた一つの特徴です。
    • 膜性増殖性糸球体腎炎
       病理学的特徴は、光学顕微鏡の所見として、係蹄壁の肥厚と分節状の細胞増殖病変です。この疾患も特発性と二次性にわけることができ、特発性は発症年齢が8-30歳代の患者さんにほぼ限られると報告されています。それ以降の年齢で発症するのは続発性とされています。 続発性の原因は、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスによる肝炎が多いとされています。ネフローゼ症候群を伴うものが約半数ですが、血尿、高血圧、腎障害を伴うなど、臨床症状は多彩です。
  5. 急速進行性糸球体腎炎
     急速進行性糸球体腎炎とは、血尿、貧血及び急速に進行する腎機能障害が特徴的な腎炎です。しばしば、他の臓器にも合併症をともないます。原疾患の多くは抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎で、病理学的には多数の糸球体に半月体形成を認める壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的な組織像です。高齢者に多いのが特徴で多臓器病変、特に肺胞出血、間質性肺炎など致死的な合併症を伴うこともありますので、早期に治療する必要があります。治療は、副腎皮質ステロイドホルモンです。また、必要があればシクロスフォスファミドなどの免疫抑制剤も併用します。
  6. 多発性のう胞腎
     多発性のう胞腎は遺伝性の腎臓病の中で最も多い疾患です。これまで有効な治療法がなく、60歳までに約半数の方が末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要となっていました。また、腎臓の機能低下だけではなく、合併症として脳動脈瘤、心臓弁膜症、のう胞感染、肝機能障害(肝のう胞)をきたす場合があり、全身的な治療が必要な疾患です。平成26年4月よりトルバプタンというお薬が、多発性のう胞腎に対する新規治療薬として適応となり、病気の進行を遅らせることが可能となってきています。これらの新規治療の開発を踏まえ、本疾患は国の指定難病にされました。難病指定医による診断と申請手続きを行えば、国からの難病医療費助成が受けられます。

高血圧(本態性・二次性)

現在わが国の高血圧患者さんは約4千万人いると言われています。ところが、高血圧となっていても、自覚症状がないために未治療の患者さんの割合が高いのが現状です。高血圧は、脳卒中や虚血性心疾患などの心血管病の危険因子として知られています。高血圧の原因に関しては約90%の患者さんが高血圧の原因を特定することができず、これを本態性高血圧と呼びます。ただし、食塩の過剰摂取、肥満などが発症に深く関連しているといわれます。したがって、本態性高血圧の治療でまずしないといけないことは、減塩やカロリー制限といった食事療法、及び運動療法といった生活習慣の是正が重要となります。生活習慣の是正だけでは降圧不十分であるときは薬物治療を開始しないといけません。

 一方、高血圧の中には、原因がはっきりと存在する高血圧があり、これを二次性高血圧と呼びます。二次性高血圧は診断初期に鑑別を行い、原因を取り除くことが根本的な治療となります。また、決してまれな病態でもなく、副腎の過形成や副腎腫瘍が原因で発症する原発性アルドステロン症は、高血圧患者の20人に一人とも言われています。また、腎動脈の狭小化にともない発症する腎血管性高血圧も増加傾向にあると言われています。

このような症状のある方は当科の受診をお勧めします。

受診方法は>>こちら

腎臓の病気って自覚症状はあるのですか?
 腎疾患の場合、体がむくんだり(浮腫)や尿が泡立ったり(蛋白尿)夜間の尿の回数が多くなったりすることがあります。しかし、病気の初期では自覚症状がないことが多いです。

検診で、毎年異常を指摘されるのですが、受診した方がいいのですか?
 検診で、尿潜血、蛋白尿が陽性となっても自覚症状がない場合、医療機関に受診されないケースが多々ありますが、腎疾患の一症状の可能性があり、医療機関へ受診し、精密検査をうけられることをお勧めします。

血圧が高いのですが?
 高血圧も自覚症状がないことから、放置されることが多いのが現状です。高血圧は、将来、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる心血管疾患の発症の危険因子です。また、腎機能が低下すると、高血圧を合併し、その高血圧が腎機能をさらに悪化させるといった悪循環に陥ることが多々あります。

腎生検ってどんな検査ですか?
 腎生検とは腎臓に細い針を刺して、組織を取ってくる検査をいいます。腎臓は、血管が豊富な組織なので、腎臓に針を刺す腎生検は出血の危険性があります。したがって、経験豊富な腎臓専門医により行われる検査です。検査自体は30分強で終わる検査ですが、入院をして行う検査です。

診療体制

 当科では佐々木環教授以下、神田英一郎特任教授、長洲一准教授、岸誠司特任准教授他、3人の講師、4人の臨床助教、数名の研修医で診療を行っています。

 入院患者さんには病棟主治医を中心に、指導医、研修医のチームで診療にあたっています。入院カンファレンスでは全ての患者さんについて教授を含む科内の医師で情報を共有し、議論を重ね診療方針を決定しています。週1回の教授回診では患者さんのベッドサイドでお話を伺いながら、診療や治療について説明を行います。当院は医学部の附属病院であり若手医師や医学生の育成にも注力しており、入院診療を通して教育機会を設けています。

 外来は診療経験の豊富な教授・准教授・講師が主に担当しており、専門領域である腎臓病・高血圧症を主軸とした診療を行っています。また専門外来として、腹膜透析外来、血液透析シャント外来、多発性嚢胞腎(PKD)外来を開設しています。基本的に外来は完全予約制ですが、ご病状によっては当日であっても受診して頂けるように診療体制を敷いています。また新規に当科の受診を希望される患者さんが、できるだけご希望に沿った日時に受診いただけるよう、新患枠を毎日設けています。詳しくは予約センターのページをご参照ください。